2024年を迎えました。昨年は格別のご高配を賜り、誠にありがとうございました。
元旦から大変な災害が起こり、被災した方々の心情を思いますと心晴れ晴れといった幕開けにはなりませんが、本年も皆様に質の高いサービスをお届けできるよう、気を引き締めて頑張っていきたいと思っております。
今回は三味線(しゃみせん)のメンテナンスについてご紹介したいと思います。
三味線は戦国時代に琉球(現在の沖縄県)から伝来してきた有棹弦楽器。中国から伝来した「三弦」を原型とした「三線(さんしん)」が琉球で成り立ち、琉球王国との貿易により本土に渡来したものが改良され「三味線」となったそうです。つまり三線も三味線もルーツは中国ということですね。
伝来して流通する過程の中で様々な変化を遂げたのでしょうか、三線と三味線はかなり大きさが違います。三味線のほうが大きいです。
三線は軽量かつコンパクトで、身長150cmの当方でも負担なくメンテナンスできるサイズなのですが、三味線はそうはいきません…。何せ棹が長いので立ったままメンテナンスを行っています。画像でメンテナンスをしているスタッフは170cm…軽々とメンテナンスしていますね。
楽器の本体は大まかに「天神」「棹」「胴」の三つから構成されており、さらに「棹」は「三つ折れ」と言いまして、「上棹」「中棹」「下棹」に分割されています。これは持ち運びに便利なこと、棹に狂いを生じさせないための仕様だそうです。
昔は「胴」に猫や犬の皮を使っていたそうですが、現在は動物愛護の観点から合成皮革を使用するようになっています。(ちなみに三線の胴はヘビの皮なのですが、弊社にある三線はすべて合皮です。)
実は以前、三味線の成り立ちについての講演会にたまたま参加したことがありまして、その際に三味線にまつわる歴史的背景も学んできました。ここに書くのが難しいほどの深く重い内容ですが、三味線が流通し始めた当時の日本社会について知ることができ、とても勉強になりました。ご興味があるかたはぜひ調べてみてください。
三味線のメンテナンスをするときは、まず本体に破損や異常がないかをチェックします。
三味線はとてもデリケートな楽器のため、棹にヒビが入ったり折れたり、胴皮がバチで傷ついて破れたりすることもあります。下の画像のような大きな破損があった場合は、和楽器の職人さんに修理をしていただきます。
ここに四桁の番号がついているのですが、三味線にはすべて個体識別番号がふられていまして、合わない番号だとパーツ同士が上手くはまらない仕組みになっています。もちろん三つ折れの棹も同様で、それぞれに番号が記載されています。
これがまた、本当にぴったりはまるんです。宮大工さんの木組みみたいにぴったりと。まさに職人さんの成せる技!現代はロボットで生産できるモノが大量にあふれていますが、こういった楽器にはやはり長年培われてきた素晴らしい技術を持つ職人さんの力が必要ですね。
本体を全体的に調べたあとは小さな汚れや破損がないか丁寧に検品→糸巻きと弦のコンディションを確認(不具合があるものは交換)→調弦。
最後にしっかりと乾拭きし、駒や指掛けなどの備品を整えたらメンテナンス完了です。これで安心してお使いいただけます。
三味線の魅力は、何と言っても音色でしょうか。たった三本しかない弦で、どうしてあんなに豊かな音楽を奏でることができるのでしょうか? 時に軽やかで楽しげだったり、はたまた鋭く重厚であったり、いろんな表情を併せ持っているところも魅力のひとつだと思います。
メンテナンスをしていると、「今現在に伝わっている楽器は機械のない時代にどうやって作ったんだろう?」とよく思います。弊社で人気のヴァイオリンは16世紀頃に登場したそうですが、起源はもっと古いとのこと。「こういうものに糸を張って、棒のようなもので弾いたら音が鳴るんだ」という発想に至るのがすごいですよね。きっととてつもなく柔軟な発想を持つ天才がたくさんいたのでしょう。ドレミの音階を発明したのは古代ギリシャのピタゴラスだといいますし、大昔に発明されたものが今でも大活躍しているってとても面白いです!
そう考えると、楽器演奏は音だけでなく歴史に触れる機会でもありますね。遠い昔に思いを馳せながら、ぜひ音楽授業を楽しんでいただけたらと思います!
本年も何卒よろしくお願い申し上げます。